トニー・ヴィスコンティ、ミュージシャンとの関わりを語る (1) (キャリアを語る (3))
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。
→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti
何枚かの有名なアルバムでは、ベースも弾いてますよね。ストリングスのアレンジもしますし、プロデュース、アレンジ、そして作曲の区別って、どうなってますか。
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区別はない。どんな人と仕事するかによる。例えばデイヴィッド・ボウイは、他の人の音楽性をすごく尊重する。そうして、彼らを際立たせるんだ。彼の才能って言ってもいい。それが彼自身の趣味には合わなくても、私がプロデューサーとしてあれこれやって、彼らから色々と引き出すのを気に入ってくれる。
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一方で、すごくガチガチな人もいる。思い描いてるサウンドから、ほんの少し手を入れるくらいなら構わないが、変えてしまうのは許さない。そういう人には、私もあまり干渉しないようにする。
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モリッシーと仕事した時には、彼が歌う時になったら、こう言うんだ。「声をもっと大きくか、もっと小さくか、それだけ言ってくれればいい」。だが、ボーカルについてだけで、バンドのことはこっちに任せきりだった。やたら大変だったよ。だが、何日か経ったら、こっちを信頼してくれるようになって、少し指南できるようになった。だが、それが彼の望んでたことなら、私はそれで十分なんだ。仕切られたがらない人を仕切るつもりはないんでね。
デイヴィッドなどと違って、難しいスターもいると思います。仕切らずに、どうやって方向性を決めていくんですか。
- ミュージシャンの持ってる方向性が、まず第一なんだ。私の方向性なんて、全てが上手くいって、素晴らしいサウンドが作れれば、それでいい。モリッシーにしろボウイにしろ、私はたいてい、自分で曲を作ってくる人たちと仕事する。彼らは熱いものを持ってる。そして、どんなふうにして欲しいかを言ってくる。なので私は、こんなふうにすれば、もっと良くなるんじゃないかとか、もっと作り込めるんじゃないかとか、言う。つまり、私は彼らのアイデアの上で仕事するんだ。何もない真っさらな上じゃ、何もやりようがないからね。なので、スタジオに入る前から、どんなふうに仕上げたいか、よく考えとかないといけない。その上で、「こんなサウンドにしよう。こんな要素で組み上げよう」ってことになる。ごちゃ混ぜの寄せ集めはダメだ。最少の楽器で最大の効果を挙げるのがいい。それがアレンジなんだ。例外はフィル・スペクター (ザ・ビートルズ「Let It Be」などのプロデューサー) かな。彼はあの手この手何でもありだったけど、上手くやれてたほうだ。
Twitter で @da_hara さんがほめてたこともあって、ボウイの「Welcome to the Blackout」を買ってみた。「Stage」と同じ1978年の ISOLAR II ツアーからの別ライブだけど、あっちはかなり整形が入ってるんで、生々しさや勢いってことじゃ、こっちかな。特に、暴れ回るブリューを堪能したいなら、間違いなくこっちだ。それと、「Sound and Vision」「Rebel Rebel」は、こっちにしか入ってない。
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