ラルフ・ヒュッター、「Computer World」を語る (クラフトワークのアルバムを語る (9/10))
時たま思い出したように取り上げてるクラフトワークだけど、これはアルバムごとにラルフ・ヒュッターが解説を加えている記事。「Uncut」誌の2009年10月の記事が去年の「Retrospective」ツアーに向けてウェブにアップロードされたものなので、その時に紹介すればよかったかも。全8枚。
→ Uncut | Kraftwerk - Album by Album
「Computer World」(1981)
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当時はコンピューターすら持ってなかった。あの音楽ではシンセサイザーもシーケンサーも使ってない。アナログで、コンピューター以前だ。ホーム・コンピューターを初めて手に入れたのは、あのアルバムを作った後だった。最初のAtari (世界最初のゲーム・コンピューターの一つ) だよ。あのアルバムは警告ではない。現実なんだ。コンピューターは使ってないが、それでも現実だ。社会はコンピューター化に向かっていた。ほとんどの人は何も気づいてなかったが、我々は気づいてた。合衆国もKGB (旧ソビエト連邦国家保安委) もインターポール (国際刑事警察) もドイツ銀行も、すでにコンピューターを使ってたんだ。
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我々自身、クラフトワーク、クリング・クラング・スタジオもそうだった。我々の「コンピューター・ワールド」だよ。自分たちの顔をコンピューター化して、歌詞もいくつか自動化した。そして、「Pocket Calculator」だ。今の携帯端末の時代を予見してたんだ。あれは本当に、ポケット電卓と、スタイロフォン (Stylophone。イギリス製のおもちゃの楽器) とか、子供のおもちゃで作った曲だ。
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当時からノートPCが欲しかったが、あったのはIBMの巨大なコンピューターだった。移動させることすらできない。Appleから最初の製品が出てきたのは1970年代の末だったが、我々には手が届かなかった。東ヨーロッパの共産圏にディジタル機材を持ち込もうとした最初の時、全部の機材をリストアップしないといけなかった。軍事技術につながるからだ。そして、音楽に使うんだってのを証明しないといけなかった。どんな小さな部品でも、何から何まで全部だ。東側から西側へではなくて、西側から東側へ、例えばミサイルに使う先端技術のパーツを持ち込もうとしてやしないか、ってことでね。いやいや、我々はアートと音楽をやってるだけなんだ。
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