スティーヴ・リリーホワイト、ピーター・ゲイブリエル「III」を語る (自ら代表作を語る (2/8))
「MusicRadar」の2011年2月の記事より。プロデューサー、スティーヴ・リリーホワイトが代表的な仕事として16枚のアルバムを選んだ内から抜粋。第2回はピーター・ゲイブリエル「III」(1980年)。
→ Production Legend Steve Lillywhite on 16 Career Defining Records
- ピーターが電話をかけてきたんだが、どうせ誰かの悪ふざけだろうって思って、まさかピーター・ゲイブリエル本人だなんて思いもよらなかった。けれども、会って、で、成功して有名になったってわけだ。「旧時代」の人、年上の人、はっきり言って、自分が歯向かってる部類の音楽の人をプロデュースするのは初めてで、新しい経験だった。だって、俺はパンク出身だが、ジェネシス (ピーター・ゲイブリエルが元いたバンド。プログレ系の代表格の一つ) は明らかにパンクじゃないよな。ピーターの色んなアイデアには驚かされっぱなしだった。「このアルバムじゃシンバルを使いたくないんだ」とか言い出す。俺は「うわー! それ、いい」。ドラムスの臨場感にはいつも気を遣ってて、必ずシンバルが邪魔になるんだよ。なので、シンバル抜きで録音して、結果はユニークな美しいサウンドになった。アルバムそのものはとてもダークだが、スタジオの雰囲気は楽しくて面白かった。ピーターはアイデアの宝庫だけど、こだわりなく何でも試してみるんだ。彼が何か言い出す度に、俺は「すごいや。じゃ、それで少しやってみようよ」。それが彼にも気に入ってもらえた。お互い、色んなことを得たんじゃないかと思う。
ピーター・ゲイブリエルのソロ・アルバムは、最初の4枚がどれも「Peter Gabriel」ってタイトルなんで、実に紛らわしい。ここで取り上げられてるのは3作めで、ドラムスのゲート・リヴァーブ (Gated Reverb。日本ではゲート・エコーって呼ぶ人もいたりした) をドラマーのフィル・コリンズとエンジニアのヒュー・パジャムが作り出したことでも有名。ピーター・ゲイブリエルとの仕事がいつも面白くて楽しいってのは、トニー・レヴィンなんかも言っている。右手の指にドラム・スティックのような棒をはめてベースギターの弦を叩く奏法 (ファンク・フィンガーズと名づけられた) をレヴィンに勧めたのもゲイブリエルだし。
次回はU2の予定。
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