イアン・アンダーソン、グラミー賞メタル部門の受賞を語る
グラミー賞っても今年の話じゃない。1989年の第31回でハードロック/メタル部門が新設された時、メタリカ「... And Justice for All」が受賞すると誰もが疑わなかったのに、結局受賞したのは、普通メタルとは思われてないジェスロ・タルの「Crest of a Knave」だった。その時のことを、ジェスロ・タルのリーダーでヴォーカル&フルート奏者のイアン・アンダーソンが語っている。「Powerline」というクラシックHR/HM系サイトの2012年2月の記事より。
→ Tull's Ian Anderson Reflects on His "Metal" Grammy Win
- ノミネートされた理由すらよく分からないし、そんなこと誰も気にとめてなかった。勝つのはジェスロ・タルだなんて、誰も思わないよ。メタリカに決まってる。理屈抜き (にメタル) だし圧倒的 (にメタル) だし、メタリカ自身もそう思ってたんだ。だから、ジェスロ・タルの名前が読み上げられた瞬間、もう会場はブーイングとざわめきと溜め息の嵐だ。6千人の投票者が俺たちを選んだなんてことはないって思いたい。あいつら良い奴らなのにまだ何も受賞したことがないよな、ってだけのことだったんだろ。自分でも「Crest of a Knave」は上出来だったと思うが、あれがハードロックだとかメタルだとか思う人がいるなんてありえない。どうせなら、片足立ちの笛吹きって部門を作ってくれれば、毎年受賞なのにな。
別のインタビューでは、「会場に行かなくてもいいって言われてたけど、ほんと、行ってなくてよかったよ」とも語っている。
ジェスロ・タルってバンドを知らないと、面白くないってか、そもそも意味が判らないかも知れない。2012/2/11 にもちょっと書いたように、ブルース/ジャズ/トラッド/プログレが混ぜこぜになったようなすごく独特なサウンドで、歌詞もひねりが効きまくりだし、誰の真似でもない、誰も真似できない、孤高の存在とも言える。ちなみに、「片足立ちの」ってのは、アンダーソンがフルートを吹く時のフラミンゴみたいな独特のポーズのことを言っている。
この事件 (笑) は「想定外のグラミー賞 トップ10」(下のリンク) でも、見事に1位に輝いている。受賞の直後、ジェスロ・タルはこんな広告をBillboard誌に出したのだそうだ。「フルートはヘヴィでメタルな楽器なんだ」。原文は「The flute is a heavy, metal instrument.」で、コンマに注意。まぁ、重いかどうかはともかく、金属製には違いない。一方、メタリカは1年後にめでたく受賞したが、その時にみんなへの感謝の広告をやはりBillboard誌に出した。その中に、「ありがとう、ジェスロ・タル。今年はアルバムを出さないでいてくれて」。
話は大きくそれるが、ジェスロ・タルはこの4月に、最高傑作の一つ「Thick as a Brick」の40周年を記念して、続編「Thick as a Brick 2」を出す予定。
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