ロバート・モーグ、シンセサイザーを語る (3/10)
シンセサイザーの父、ロバート (ボブ)・モーグが、自らの半生などを語っている。Red Bull Music Academyの2003年の公開インタビューより。なお、本人は2005年に亡くなった。
→ Red Bull Music Academy | Bob Moog
当時のVCOはどんなだったんですか。
- (Moog Voyagerからごく低い音を出しながら) スピーカーを見れば、振動してるのが判るだろう。電圧の上下に反応してるんだ。音が高くなると、振動も速くなる。1964年当時、発振器って言えば、それはノブが1つ付いた大きな箱だった。ノブを回すと周波数が変わる。周波数を1つセットすればいいだけなら、それで充分だ。だが、音楽には使えない。音楽ってのは色んな周波数の音から構成されてるからね。その度にノブを回してなんかいられない。なので、周波数を指で制御できるような何かが必要だ。 (指を鍵盤の上で滑らせて) これがピッチ・グライドだ。鍵盤で電圧を変化させてる。「グライド・レート」ってノブを回すと、変化を遅くすることができる。1960年代にミュージシャンと我々エンジニアが一緒に仕事しながら学んだことの一つだ。VCOを使うようになる以前には、こんなことは誰も知らなかった。
その頃、ミュージシャンとエンジニアの関係はどんなでしたか。
- 我々エンジニアは、ミュージシャンと喋るのに必要なくらいには、音楽のことを知っていた。何人かは実際にミュージシャンでもあったし。例えばドン・ブクラ (Buchlaシンセサイザーを作った人。2016年に死去) は、私が関わるようになった頃から精力的で、今でも素晴らしい仕事をしているが、エンジニアってよりはミュージシャンだ。私はミュージシャンを手助けするだけだが、彼は音楽についてビジョンを持っていた。
「我々」というのは、どのような人たちですか。
- ごく限られた面々だったね。私が会社を始めて、少しずつ集まってきた。ジム・スコット (モーグと一緒にMicromoogを作った人) とか、ビル・ヘムサス (モーグと一緒にMinimoogを作った人) とか。あまり知られてないが、モーグを使うようになれば判る。パオロ・ケトフってイタリア人もいて、彼はSynketって楽器を作った。彼と私は、ミュージシャン相手の仕事が好きなエンジニアってことでは、共通してたかも知れない。
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