トニー・ヴィスコンティ、ミュージシャンとの関わりを語る (3) (キャリアを語る (5))
プロデューサーのトニー・ヴィスコンティが、聴衆を前にしたインタビューで、これまでのキャリアを振り返って色々と語っている。「Red Bull Music Academy」が2011年にマドリッドで主催したもの。以前に紹介した 「ボウイのベルリン三部作を語る」 とかぶる箇所もあるが、できるだけ重ならないように紹介するつもり。
→ Red Bull Music Academy | Tony Visconti
何テイクくらい録りますか? 何回までって決めますか、それとも、延々と録り直しますか。
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決めておくほうがいい。ボーカリストは自分をチェックして欲しいから私を雇うのであって、「じゃ、30回、40でも50でもいいけど、歌ってみようか、そうしたら帰っていいよ。後は私がうまくやっとくから」ってみたいに、声を無駄遣いしたいからじゃない。そんなやり方は、性に合わない。私は彼らと一緒に、彼らにフィードバックを与えて、3番の歌詞はメロディに少し即興を混ぜようかとか言ったりして、彼らと良い関係を築きたいんだ。
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そういうコーチの技は、長年ずっと経験を積んでくる内に、身につけた。例えば、コーラスを書き直させたかったら、しっかり上手く言わないといけない。でないと、コーラスがしっくり来ない。誰かが言わなきゃいけないし、それが私の責任なんだ。自分がプロデューサーとして雇われてるのは、そのためだ。だから、それくらいまで指示を出す。そうでないと、出来てくるのはただのゴミの山だ (笑)。それは誠実な仕事とは言えない。そんなふうにしっかり指示するのは、本当に難しいよ。
そういうことでは、スタジオ入りの前にリハーサルをしっかりさせておくタイプですか。それとも、スタジオで作り上げていくタイプですか。
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もし予算に余裕があるなら、2・3日くらい前からプリプロダクションをやるのがいい。一通り全ての曲を何回かやってみるんだ。前もってメモを作ってアドバイスをして、それをプリプロダクションでやってもらう。だが、アイデアの50%はスタジオでの作業に取っておくのが好きだな。
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リハーサル (プリプロダクション) の雰囲気は、スタジオのとはずいぶん違う。とにかくラウドにやって、2トラックのレコーダーで録る。スタジオでは、些細なところまでチェックする。すると、全てがはっきりと聞こえてくるようになるんで、そのディテールに集中する。例えば、こんなことがあった。ツインギターのバンドで、音がデカすぎて、一方のギタリストが、もう一方のギタリストがある箇所で違うコードを弾いてるのに気づかなかったんだ。そのことにスタジオで気づいて、互いに調整していった。そういうような可能性があるから、50%は固めずに残しておくんだ。
また間があいてしまった。次回は (いよいよ) ボウイの「Heroes」の話。
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