ラルフ・ヒュッター、クラフトワークの音楽を語る (2/4)
「Red Bull Music Academy」サイトの2012年8月の記事より。インタビューそのものは1991年、「The Mix」のリリースに合わせて行われたものが、なぜか2010年まで公表されなかったとのこと。
→ Red Bull Music Academy - Interview: Kraftwerk
カンやファウストと同時期になりますか。それとも少し後?
- フェスティバルや色々な機会に、あちこちで会っていた。ホルガー・シューカイ (カンのリーダー、シュトックハウゼンの弟子) は、ずいぶん昔からの友人だ。ドイツには文化の中心ってものがなく、ミュンヘン、ケルン、デュッセルドルフ、ベルリン、場所ごとに傾向が違う。
デュッセルドルフはデザインの中心地ではないってことですか?
- そうだ (否定疑問文に「Yes」と答えているが、文章の流れから考えて、「ない」という答えだろう)。自分たちはいつも色々なアートの形を取り込んで来ている。ロボットは我々の音楽の一部だ。我々はロボットの一部だ。アルバムにしてもコンサートにしても、楽器をデザインしたり絵を作ったりする。自分たちが純粋な音楽家だと思ったことは一度もない。音楽に特化しているわけではないんだ。
クラフトワークのどのアルバムもそれぞれ、マスコミュニケーションやテクノロジーについて、色々なアイデアを試しているように見えます。どれだけの人たちがあなた方の仕事からアイデアを持っていっているか、判っているでしょうか。ヒップホップやテクノなどは明らかですけど。
- いや。しかし、フィードバックはもらっているよ。
あなた方の目標の一つは、万国共通の、または国境を越えた音楽の言葉を作ることだと言ってもいいですか?
- 完璧な言いかただね。それを成し遂げたなんて言ったりしたら自惚れもいいところだろうけれども、そうなったとしたら素晴らしい。我々はデトロイトと日本で公演して、受け入れられている。考えられる限りで最大のやりがいを感じたことだ。電子音楽は世界共通の音楽だ。「地球村」(global village。世界が一つの村のような共同体になること) の時代が来ようとしている。もう2〜3世代は先のことかも知れないが。
イギリスのリスナーは、黒人音楽こそが正統的で純粋だと考えがちです。ヒップホップが、自分たちの元々の音楽 (黒人音楽のこと) とは全く違うところ (クラフトワークの音楽のこと) からアイデアをもらってきているというのは、大変に面白いと思うのですが。
- 我々は全く違うバックグラウンドを持っているからね。あなたがテキサスかシカゴから来たとしたら、我々は別の場所から来ている。
アメリカの音楽から、何であれ影響を受けたことはありますか?
- ラジオの世界、エンターテインメントの世界って意味では、何かしらあるだろう。だが、我々のルーツは映画音楽、クラシック音楽、ドイツの電子音楽、そして自動生成したリズムパターン、そういったところにある。自分たちの音楽には、例えばギターの居場所はない。
たしかに、クラフトワークはデュッセルドルフ、カンはケルン、ファウストはヴュメ、タンジェリン・ドリームはベルリン、アモン・デュールはミュンヘンだ。それぞれ違うって言いたいんだろうな。
何だか、クラフトワークが5月に来日って話があるらしい。噂では、こんな感じの日替わりコンサートになるようだ。
→ facebook - Kraftwerk at the MoMA
→ Pitchfork - Kraftwerk to Bring Eight-Night Retrospective Residency Series to Germany
→ Tate Modern - Kraftwerk: The Catalogue 1 2 3 4 5 6 7 8
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