スティーヴ・ヴァイ、「The Story of Light」全曲を語る (8/12)
「Music Radar」サイトの2012年7月の記事より。8月に発売される7年ぶりの新作について、曲ごとに解説している。
→ Steve Vai Talks The Story of Light Track-by-Track
The Moon and I
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アテネ公演でサウンドチェックしてる時に出来た曲だ。何を弾くとも決めないまま始めると、バンドのみんなが付いてくる。それを録音することにしてたんだ。時には詰まらない曲になるし、時にはすごくかっこいいのが出来たりする。
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このサウンドチェックは憶えてる。ジャムって15秒くらいで、こんなコードが出来てきた。あまり時間がなかったから、バンドに急いで説明して、1テイクだけ録った。百くらいあるサウンドチェックに紛れて放置状態だったんだけれども、ある時、たまたま行き当たった。うまく使えそうな気がしたんで、磨きをかけて、エフェクトをかけて、ヴォーカルを載せて、ギターソロをまぶした。もともとVaiTunesで公開してたけど、特別な感じがして、ディジタルだけじゃ勿体ないんで、リミックスして、こんなふうに仕上げたんだ。
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実際、とっても個人的な曲だよ。20か22歳くらいの頃、激しく鬱で落ち込んでた時期があってね。原因も判らない。ドラッグをやってたわけじゃないし、素晴らしい仕事 (ザッパ・バンドのこと) に恵まれてたけれども、どうしようもなかった。自殺寸前まで行った。だけど、ある晩、そのギリギリの瞬間に感じたんだ。死んで何になる、物事がもっとずっと悪くなるだけだろ、って。で、さらに思った。誰が言ってくれてるんだ?、って。一人の人間を超えたものの存在を感じた最初の時だった。その奇跡の瞬間から後、俺の世界観は少しずつ変わっていった。感情も安定するようになって、一年くらいの内に気分はずいぶん良くなった。それ以来、もう鬱状態に戻ることもなくて、良くなる一方だ。
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あの暗い鬱の時期に、こんな夢を見てた。ぐちゃぐちゃな感情から解放されて、大地も星々も何事も、この世のものとは思えないくらい美しい。そんな中を俺は、何にもとらわれずに漂っていくんだ。そんな時の至福の陶酔感を歌詞にしてみた。
ヴァイにもそんなドツボな時期があったとは。ちっとも知らなかった。
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